そして北へ 1

2001年8月12日(日)〜14日(火)
KBM祭りに初参加

















ふと、蝉の声で目が覚めた。

時計を見るとまだ朝の6時を回ったばかりだ。

やけに元気よく鳴いている。そうだった、昨日からお盆休みなんだ。






夕べは地図を見ながら少し飲みすぎたようだ。

地図でいろいろなツーリングルートを

考えるのはとても楽しい。つい、お酒もすすんでしまう。

再び目を閉じて寝ようとしたが、なかなか寝つけない。

蝉の声もいっそう激しくなっている。

しかたなくベットに座り、タバコに火を着ける。


「久し振りにバイクで出掛けてみるか」


夕べ、地図を見ていたせいか、旅に出たがっている自分がいる。








2本目のタバコを途中でもみ消し、立ち上がる。

顔を洗うとシャキッっとしてきた。

珍しく朝から気分がいい。飲みすぎたわりには酒も残ってないようだ。

目的地を決めずに出かけるのもいいかもしれない。

部屋に戻り、いつものツーリングバックを取り出す。

2、3日のイメージで着替えを用意し、あとはデジカメや地図、メモ帳などをバックに詰め込む。

夏のツーリングは荷物が少なくてすむ。






荷物をバイクにくくり付け、チョークを引いてセルを始動。

「キュルルルル・・・・・」 かからない。

「キュルルルルル・・・・・・」 だめか?

「キュルルルルルル・・・ズバボッボッボッ・・・・・」

かかった!

暖気をしている間にタバコをふかしながらコースを考える。


「とりあえず北に向かうか・・・・」








暖気もすみ、いよいよツーリングのスタートだ。

天気はいまひとつ冴えない。

天気予報によると、ここから北方面の地域は降水確率が20%から40%くらいだ。

なんとか、クリアできるだろうか。






家をでて北上し、40分も走ると広い高原のど真ん中にいた。

広い空を覆い尽くす雲が夏の季節感を無くさせている。

まだ、8月も中旬に入りかけたばかりだというのに。

ただ、温度だけは上がっているようだ。

26℃くらいはあるのかもしれない。

秋っていうやつは、夏の名残を惜しんでいると、

いきなり切って落とされたようにやってくるから

気をつけなければいけない。







高原をあとにし、山を2つほど越えると、視界にいきなり盆地が広がった。

市街地には向かわず、高速道路に入る。

さすがにお盆だけあって、いつもより交通量が多い。

急ぐ旅でもないので、流れにまかせてのんびり走る。






さて、ある程度のコースを考えなくては・・・・・

途中、サービスエリアに寄り、入口近くにバイクを止める。

缶コーヒーを買ってきて、縁石にしゃがみ込み地図を広げた。

やはり、海か?

どんどん北上して、海に突き当たるまで走ろうか。

自販機で買った缶コーヒーはあまり冷えてなく、なおさら甘く感じる。

半分ほど残っている缶コーヒーを片付け、再び出発する。

北に向かって・・・・・。








高速は盆地を突き抜け、北にルートをとっている。

両脇には3000m級の山々がそびえたっているのだが、

あいにくの天候のため、雲に隠れて見えない。

路面も雨が降ったあとがあり、

先行きの不安を感じる。

このあたりで、高速を降り、山岳ルートを流してみようかとも

思ったけれど、 やはり、一気に海まで抜けるしかないようだ。







しばらく走ると、右手に広い湖が見えてくる。

湖畔に降り立つと、まるで海のような大きな湖だ。

夏は、湖上花火大会でとても盛りあがる。

今年はもう終わったのだろうか・・・・・。

少しだけサービスエリアから眺めて

湖をあとにする。


とても心地良い風が吹いていた。







湖のあるところから30分ほど走ったとことで、

高速を降りた。

ここで降りるのが一番海までの最短距離なのだ。

海まで国道が走っているが、川向こうの旧道を選んで走る。






やっぱり国道をはずれると風情がある風景に出くわす。

川で、釣りをしている人、カヌーをやっている人・・・・・・

とてものどかで気持ちも落ち着いてくる。

この川も海につながっているのだろうか・・・・

さて、そろそろお昼かな。

この先に登山客で賑わう小さな町があって、

そこに美味しい蕎麦屋があるのだ。

ただ、いつも行列ができるので、早めに行くとしよう。








店に到着し、バイクの駐車位置に悩んでいると、

奥から店の主人が出てきて、正面に止めてもいいと言ってくれた。

しばらくこの町の話、旅の話などをして過ごす。

もう、お店の中はたくさんのお客さんで一杯なのに、

とても気さくで感じのいい主人だ。

有名店になっても素朴な雰囲気を大切にしているのは

とても嬉しい。だから、いつまでも有名店なのかな?








店内は、登山客で賑わっていた。

年配の人達が多いようだ。

バイク乗りは自分だけしかいないため、

少しだけ違和感を感じる。

地図をバイクに取りに行き、

今後のルートを確かめながら蕎麦を待つとしよう。

海まで、あと80km弱ってところだろうか。









名物「塩の道そば」が運ばれてきた。

海老や野菜の天ぷらと、おろしや盛りだくさんの山菜が

のっている。

料金は1600円と、少し高めかもしれない。

でも、蕎麦嫌いな自分でも美味しいと感じる。

たまの贅沢だ。








ゆっくりと食事を堪能し、店をでる。

まだ、お昼過ぎだ。

また、脇道に入りながらのんびり北上しよう。


のどかだった県道も、途中から国道と合流した。

ここからはトンネルも多くなってくる。

海まであと、50kmだ。










このあたりのトンネルは、その作りのせいなのか、

排気音やタイヤの音などが重なって、

まるで魔物が叫んでるように聞こえるときがある。

長いトンネルを抜けて出口が見えたときはホッとする。


どうも、トンネルは苦手だ。








畑の中を走る一両電車が旅気分をいっそう盛り上げてくれる。

たまには電車の旅もいいのかもしれない。

                                                    

                                                                            考えてみたら
狭いシートに座り続けて何百km
も走るってのも凄いことだ。







山の間をすり抜けて行くと平地にでた。

いよいよ海とご対面だ。

小さな港町をすぎ、海沿いを走る国道とぶつかったら

いきなり海が現れた。











川がぶつかる海はとっても不思議だ。

温度も質も違う。

淡水と塩水、そして波と流れがぶつかり合う。

いったいどんなやりとりをしているのだろう。

毎日毎日同じ事を繰り返し・・・

魚はどうしてるのだろう、

他の生物は?

いつも不思議に思う。








海岸通りを南西に下りながら半島へ向かう。

天候が悪いせいか、どこに行っても暗い感じが付きまとう。









雨が降らないのがせめてもの救いだが、こうも曇りが続くと

気分までよどんでしまう。

空も海も大地も広いだけに、余計にグレーな感じが強調される。

ただ、とても涼しく走っていられるのは

この8月に幸せなことなのかもしれないが。







再び国道からはずれ、県道へと入る。

少しだけ薄日が差してきた。

不思議なもので、たったそれだけのことで、景色も変わり、

気分まで変わってしまう。








いきなり畑の中に観覧車が現れ、

ひまわりまで花を添えた。

観覧車の向こうはすぐ海だ。

乗ったら、きっと気分がいいに違いない。

かすかな陽射しとはいえ、さすがに8月の太陽だけあって、

ぐんぐん体感温度が上がる。

歩くと汗もにじんでくるくらいだ。

でも、嫌な気はしない。

どんどん暑くなれ!と、

心の中で叫ぶ。













本当に広い!

道の先は海しかない。

畑の先は畑しかない。

見上げれば空と雲だけ。

寂しくなるくらいの広さだ。

きっと、面積上の広さだけではないんだろう。

視覚的、感覚的、そして、情緒的な広さも加わる。












夕暮れの海岸はなぜか物悲しい。

水平線の向こうの山々に大きく雲が覆い被さってるのが見える。

これから向かうあたりだ。







海岸に別れを告げ、国道に入る。

とても広いバイパスだ。

小雨がちらついてきたので、デジカメをしまい、車をかわしながら速度をあげる。

しばらくバイパスを西に流したあと、今度は半島を北上する国道にぶつかったところで、

右折して半島に入る。

雨は小雨が降ったりやんだりで、レインウェアを着るほどではない。

しかし、不安定な空の下をゆっくりと走る余裕もなく、

半島最大の港町に急ぐ。

17:30頃だろうか、途中で予約をしていたホテルに到着した。





軽くシャワーを浴び、ホコリと疲れを洗い流す。

髪を拭きながら部屋の窓を開けると

本格的な雨が降っていた。

どうやらギリギリ間に合ったようだ。

ベッドに腰掛け、タバコに火を着ける。

夕飯はどうしようか・・・・・

近くにコンビニはなさそうだし、それっぽい食堂もない。

居酒屋にでも行ってみようか。

そういえば、今日は缶コーヒー2本だけしか水分を取ってない。

生ビールが旨いに違いない。

ろくに髪も乾かさず、TシャツとGパンに着替えて町に出る。

ホテルは駅の近くにあり、ちょっとした飲食店街もすぐだ。

ホテルの傘を借りるまでもないほど近くの

居酒屋の暖簾をくぐった。





なかなか趣のある雰囲気の良い店だ。

生ビールと、刺身やツマミを注文する。

運ばれてきた生ビールは、グラスがキンキンに冷えていて

ビールが凍るほどだ。

旨い!

一気にグラスの半分ほどを飲み干し、一息つく。

思わず声がでてしまうのはなぜだろう。






肴が運ばれてきた。

どれも旨い。

旅先だからなおさらなのだろう。

お腹も落ち着き、喉も潤った頃、カウンターの隅で

一人で飲んでいる女性に気がついた。

カジュアルなお店だけど、女性が一人っていうのも珍しいなと、

訳ありなのかなって、勝手に思っていたら

つい、目があってしまった。

慌てて目をそらして、グラスを口に運ぶがあまりにも不自然だ。

動揺しながら、グラスを何度も口に運び、タバコに火を着けていると、

彼女が近づいてきた。



「お一人ですか?」 と、彼女。

「はい」

「ご一緒してもよろしいかしら」

「あっ、はいっ、どっ、どうぞ・・・」



動揺を隠し切れない自分が情けない。

彼女はグラスを持って隣りに座る。

良く見るととても綺麗な女性だ。

化粧が濃く見えたが、実は端正な顔立ちなのでそう見えるだけだ。

ほとんど化粧をしてないようだ。

思わぬ展開にドキドキしながら港町の夜は更けていった。




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